その日は終戦記念日、そしてお盆の最終日、明け方に夢をみた。ご先祖様のような仙人のような、もしかしたら神様のような白装束の老人に語り掛けられるシチュエーションで、それが私に向けられた言葉なのかどうかは釈然としない。ただその老人に対して、「このままでは集落に人がいなくなってしまう」という悩みを告げた後からその夢が始まった気がする。

その老人はためらわず仰った。「なぜ農耕にいそしまぬ。それぞれの地域で農耕に励めば、その仕事は永続的なものとして受け継がれるはずだ。人が減るはずもない」。そして言い終わった後、私の頬を平手でなぐった。痛くはなかった、夢だから当たり前だが。

でもその通りだ。自然は季節ごとに移り替わりながらも必ずその繰り返しを約束してくれていて、農耕という労働に対する恵みをもたらしてくれる。人が生きていく上で欠かすことのできない食糧を与えながら。なぜ人間はその大事な営みを他人まかせにして平気でいられるのだろう。そんな風に考えを深めながら目が覚めた。とても気持ちのいい目覚めだった。

人口減少という深刻な社会問題とこれを食い止めるための行政施策に頭を抱えているが、原点に帰れば回答は意外にも簡単なのかもしれない。単なる夢だと片づけるのはいいささか乱暴であり、少し立ち止まって農村や漁村の可能性を掘り起こすいいきっかけになりそうだ。それにしてもあの老人はいったい誰だったのだろう。