最近またもや百田尚樹氏に対するメディアの批判が強くなっている。でも私は百田氏のツイートをフォローしているので、メディア批判が根拠のないものであることを理解している。なぜ百田氏がこのような批判の対象になりやすいかというと、ご自身の表現がストーレート過ぎるし、その使命感から物事の是非を明確にする性格にあるのだろう。メディアの中でも特に朝日新聞は彼の言動によって、存立の根拠を崩されそうだから他のメディアと組んで「集団的自衛権」を発動しているのかもしれない(笑)。
でも百田氏の感性や表現のきめ細やかさ、心根の優しさは、この短編集『輝く夜』を読んでいただければ理解してもらえるし、メディアが掲げる先入観を一気に吹き飛ばしてくれる。『魔法の万年筆』をはじめ5編からなるこのストーリーはクリスマス前後の夜に繰り広げられる女性が主人公の物語だ。不幸の連続の中に垣間見える幸せの温もりが読む側に感動を与えてくれ涙を禁じ得ない結末を迎える。こんな繊細な心配りができる人が、あえてメディアに論争を挑むのはなぜだろうと違和感を感じるほどだ。
「真面目に生きている人こそが正当な評価を受けなければならない」そんな道徳感は当たり前のことではあるが、どうやら最近は弱者権力が目立ちすぎて、「言った者勝ち」「言わなきゃ損」という敵対社会に誰かが差し向けているような気がする。そもそも政治とはサイレントマジョリティに気持ちを寄せながら、将来を見据えて舵取りを行う使命があるはずで、目先の感情論や問題の先送りがあってはならないと思う。でもなんとなく「真面目で無口は損をするかもしれない」という価値観がはびこる現代社会において、手を差し伸べてくれるサンタクロースへの期待がこの小説の根底にある。とにかく真面目に生きていても報われにくい人たちにはとても勇気づけられる作品なのだ。
テレビ各局も不倫とか殺人とか反社会的な題材ばかりでドラマを創り、国民にいかがわしい好奇心を煽って視聴率を稼ぐのではなくて、こうした感動ものをどんどん発信することが社会の公器としての役割があるのではないか。そして涙にはいろいろあるが、美しさや優しさに対して流す涙は素晴らしいと思う。最近は「涙活」というストレス発散活動があるそうだが、ぜひともその題材にこの小説をお読みになることをお勧めしたい。